京都市下京区、新旧の建物が密集したエリアに建つ子育て世代家族の為の住宅を設計しました。
建物の配置計画について
周辺環境や要望を整理し設計を進める中で、プライバシーを確保した上で光や風を取り込めるコの字型形式の案が自ずと生まれました。しかし、定石通りのコの字型形式は、特殊な平面形式ゆえに廊下が中庭と平行に配置されたり、L型にLDKが配置されてしまう等、動線計画や抑揚のあるシークエンスに欠ける点をいかに解決するのかが課題となりました。本計画では吹抜けによる断面的なつながり、平面・立体的なボリュームのずれ、光や風を取り込む為の開口部についても細かく設計する事で、多彩なシークエンスを体感できる住宅を計画しました。
室内のプランについて
コの字型のフットプリントはそのままに、ダイニングキッチンとリビングは平面的、リビングと2階スタディスペースは立体的に空間の ボリュームを斜めにずらして配置しました。この事で、ひとつながりの空間の中に死角が生まれ、家族がつかず離れずの程よい距離感を保ちながら各々の時間を愉しんでいます。また、上下階の移動の際には、空の気配や瓦屋根の街並を取り込めるように、開口部の位置や大きさ、下屋部分の高さについても検討した結果、内外へシークエンスが拡張し、広がりのある暮らしを実現しています。
パッシブデザインについて
屋外(中庭)と室内(吹抜)のヴォイドにより、一階の室内深部にまで自然光が広がり、季節や天候に応じて光の濃淡が生まれています。また、風が南北へ流れ、上下階共に快適な室内環境を実現しています。そして、敷地南側の木造長屋(倉庫として利用中)の瓦屋根をライトシェルフとして活用しており、屋根に反射した光がハイサイドライトを介して天井面へ拡散しています。敷地東側の建物(実家)の白色の外壁もレフ板として利用しており、本来であれば暗くなる時間帯においても、反射した西日が中庭を介して室内を照らしています。
街並みとの関係について
敷地には元々、老朽化した二軒長屋が北側の2項道路の境界に沿って建っていましたが、本計画ではセットバックして隣家と外壁ラインを揃えています。また、両隣の3階建ての建物に対して2階建てにする事で、軒高を抑えて道路側への圧迫感を軽減しています。そして、新旧の建物が密集する雑然とした街並みに対して、装飾を抑えた飽きのこないシンプルな外観としました。また、開口部についてはカーテン等で閉じるのではなく、道路や隣家との距離や位置を検討し配置する事で内外が緩やかにつながり、のどかな街並みが形成されていくと願っています。
所在地/京都府京都市
用途地域/第一種住居地域
主要用途/一戸建ての住宅
建築面積/62.93㎡
延べ面積/106.68㎡
規模/地上2階建
主要構造/木造軸組工法